オールインPayPayで「金融の常識変える」

攻防キャッシュレス④

Zホールディングス(HD)が金融事業のブランドを「PayPay」に統一し事業拡大を図っている。クレジットカード事業を担う会社も2021年10月にワイジェイカードからPayPayカードに社名を変更。カードも一新し、22年2月にはPayPayアプリを使いQRコードで支払える後払いサービスも始めた。グループ一体で金融事業の成長へ攻勢をかける。PayPayカードの谷田智昭社長に戦略を聞いた。

(聞き手はフィンテックエディター 佐藤史佳)

顧客体験を変える

――PayPayカードへ社名を変え、PayPayカードの発行や後払いサービスを開始しました。ブランド統一の狙いは。

「グループが様々な金融サービスを展開していくなかで、シンボリックにブランドをひとつにすると20年度に発表した。これまでサービスの名称が異なり、ブランドの分断があった。21年4月にジャパンネット銀行からPayPay銀行に社名を変えたところ、ブランド分断がなくなり、狙い通り4~5月にPayPay上での銀行口座の申し込みがぐっと押し上がった。PayPay上でお客様が使える金融サービスをわかりやすく提供するのが大きな目的だ。銀行や証券、保険などすべての金融サービスがPayPayで完結する『オールインPayPay』を目指し、グループ全体のブランド戦略にのっとって統一した」

――ブランド統一の効果はカードでもあらわれていますか。

「まさにみえてきている。21年12月のPayPayカードの開始、22年2月の『PayPayあと払い』の開始で、申し込みや利用実数が上がってきている。ヤフーショッピングにおいては逆にブランド分断が心配だったが、ヤフーショッピングでも便利な支払い手段としてPayPayブランドが浸透しつつある」

「PayPayは4500万人を超えるお客様に支持されている。これまでPayPayの支払い方法は残高払いが中心だったが、支払いの根源ニーズは『今払う』と『後で払う』の2つある。PayPayカード社は後で払うことへの課題を解決していきたい」

――社名変更前も右肩上がりで成長してきましたが、同じくネット系カードの楽天カードには水をあけられています。ブランド統一戦略が、成長カーブを変える起爆剤になりますか。

「ブランドを統一するだけで非連続な成長ができるとは思っていない。これまでの顧客体験をより便利で安全・安心なものにしていく。今回のPayPayカードは券面にカード番号もセキュリティーコードも一切印刷していない。スマートフォンが手元にある時代には、スマホをクレジットカードのように使える必要がある。PayPayアプリのQRコードを通して後払いできるサービスも始めた。PayPay加盟店では『PayPayあと払い』で払い、加盟店以外ではカードで払うというようなハイブリッドな形だ。顧客体験を少しずつ変えながら非連続な成長ができればと思っている」

「PayPayあと払い」はPayPayアプリ内で利用でき利用代金は翌月27日に登録口座からPayPayカードの利用金額と一緒に引き落とされる

「クレジットカードを利用したときに即時にPayPayアプリと連動して通知や利用明細が届く機能を提供したい。例えば普段は東京で使っているが、北海道で使った場合は違う色の通知が届くようにするといったことも可能だ。金融機関では一般的だった(大量のデータを一括処理する)バッチ処理を、リアルタイムに変える。金融機関の常識をインターネットの常識に変えていきたい」

――谷田社長はZフィナンシャルの社長も経験するなどグループで様々な役員を経験してきました。PayPayカードのグループ内での位置づけは。

「グループの統合事業戦略においてもPayPayカードは重要な機能だ。LINEでコミュニケーションしてお客様が気づき、ヤフーでモノを探し、PayPayモールなどで買う。グループの中での一貫したユーザー体験の中で、購買する際の決済機能を提供するのがPayPayカード社の役割だ。その後の引き落としはPayPay銀行、お金が余ったときに増やすのはPayPay証券。LINE、ヤフー、PayPayという3つのスーパーアプリで、お客様と寄り添う時間をしっかりとおさえていきたい」

「複数のサービスを1つのIDで使っていただくとユーザーのARPU(1人当たりの平均単価)が上がる。エンゲージメントが高いためだ。例えばPayPayカードを持っているお客様は、ヤフーニュースをよく見ていただけている。ヤフーショッピングの購買単価も高い。結果として収益性も高くなる」

谷田 智昭(たにだ・ともあき) 1996年(平8年)上智大理工卒、オリエントコーポレーション入社。2003年にヤフー入社。12年からヤフー執行役員R&D統括本部長、18年に執行役員決済金融統括本部長(現金融統括本部長)。19年にZフィナンシャル代表取締役社長。21年6月ワイジェイカード(現PayPayカード)社長に就任。ヤフー執行役員やZフィナンシャル取締役副社長執行役員最高執行責任者(COO)のほか、ヤフー傘下の関連会社取締役も複数兼任している。神奈川県出身、48歳

「金融は機能」を追求

――決済事業でPayPayとどうすみ分けますか。

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