愛知・中京統合、急転直下の裏に幻の「銀証再編」

愛知銀行・中京銀行 10年越しの縁談 ㊤

10年越しの縁談がようやくまとまった。12月10日に経営統合を発表した愛知銀行と中京銀行はともに愛知県地盤のライバル同士。交渉の起源は米リーマン・ショック後までさかのぼるが、近親・近隣同士の利害対立や警戒感がハードルとなり、別々の道を歩んできた。それが急転直下、来年秋の統合を決断した。なぜ、両社が歩み寄ることになったのか――。3回に分けて舞台裏をリポートする。

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封印された「前史」

愛知銀行・伊藤行記頭取「お互いの強みを生かし、愛知県でのプレゼンスが強くなることが決め手だ」

中京銀行・小林秀夫頭取「ソリューションビジネス営業を強化するため同じベクトルなら判断すべきタイミングだった」

12月10日に名古屋市内のホテルで開いた記者会見。「何が最終的な判断の後押しになったのか?」という記者の質問に対し、両トップが口をそろえた統合理由は「愛知県を地盤とするビジネスモデル」そして「それぞれの中期経営計画で進めてきた経営戦略」。そこが共鳴したからだと言う。

たしかに両行は「5月に守秘義務契約を結んで検討に入った」(愛知銀の伊藤頭取)、「正式には6月から情報交換を始めた」(中京銀の小林頭取)。半年の急転直下で成就した縁組は思いや戦略が重なった結果に違いない。だが会見で素通りしたのは、統合に至る「前史」だ。

複数の関係者に舞台裏を聞くと、違った背景も浮かび上がる。とりわけ規模で中京銀を上回り、再編対応が注目されてきた愛知銀側から眺めると市場原理の波がじわじわと近づいていた、という現実だ。

東海東京が統合打診

統合協議の前年の2020年。愛知銀に経営統合を打診していたのは、東海東京フィナンシャル・ホールディングス(FH)だった。関係者によると、東海東京はTOB(株式公開買い付け)も視野にファイナンシャル・アドバイザー(FA)探しを進めていたという。

仕掛けられた側の愛知銀の伊藤頭取は日本経済新聞の取材に「ノーコメント」と沈黙を守っているが、東海東京関係者は「愛知銀側にやる気がなかった。無理はしなかった」と明かす。

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