リテールに迫る危機、活路のLINE銀行 多難な船出

渡辺淳

みずほフィナンシャルグループには組織改革を重ねても長年変わらない課題がある。マスリテール(一般の個人客)での苦戦だ。新規の口座開設数で楽天銀行に逆転を許し、将来の顧客基盤を揺るがしかねない事態が静かに進む。若年層への訴求力を高めるため、約8600万ユーザーを抱えるLINEとつくる新銀行に活路を求めるが、そのLINEで個人情報の不適切な取り扱いが明らかとなった。船出に暗雲が漂っている。

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#01 3度のシステム障害、生かされぬ教訓
#02 金融庁に突きつけた宿題 未完の「企業風土改革」

脇役から主役級に

初めてつくった銀行口座はアルバイトを始めたり、進学を機に両親から仕送りを受けたりするためだった、というひとは多い。みずほ銀行では給与の振込先として使われる口座の約85%が高校や大学、専門学校の在学中に開設されたものだという。このため各行はいち早く若年層を囲い込むため、駅近くの一等地に店舗を構えて利便性を競ってきた。

そんな定石を覆す変化が起きている。みずほで2019年度に開設された口座数は72万件。5年間で12%減った一方、店舗を持たないインターネットバンキングの楽天銀行は136万件と同じ期間に3.5倍になった。20年度は150万件以上に伸びたもようで、足元ではさらに弾みがついている。

全体の口座数こそ、みずほの約2400万に対して楽天は1000万程度と半分以下にとどまるが、勢いの差は歴然としている。10~20代への浸透力が落ち、年間の口座開設が緩やかに落ち込む傾向は三菱UFJ銀行や三井住友銀行にも通じる。

学生が就職し、結婚や出産、マイホームの購入など人生のイベントを重ねるなかで、銀行は取引を重層化させていく。入り口が細れば将来の顧客基盤の弱体化は避けられない。みずほが18年11月に国内随一のプラットフォーマーであるLINEとの提携を発表したのは、そんな危機感からだった。

金融取引がスマートフォンで完結する「LINE銀行」(仮称)は目標だった20年度中の開業をいったん見送ったが、立ち上げ時期を22年4~7月に仕切り直した新銀行の全容がNIKKEI Financialの取材で明らかになった。

「1千万口座獲得計画」――。みずほが春先にまとめた計画には開業

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