銀行の内部資料 課税・税務訴訟の決め手に

企業税務エディター 川瀬智浄

銀行が融資などの際に作成する内部資料が、国税当局による課税処分やその後の税務訴訟の決め手となる傾向が強まっている。今春、資料の記載内容から「相続税を減少させる目的は明らかだ」と裁判所が判断し、納税者側が敗訴する税務訴訟が2件続いた。今後、国税当局がこうした資料を積極的に収集する傾向は強くなるとみられ、専門家は「税務調査などを意識した対応が重要になってくる」と指摘している。

3億円超の相続税を圧縮

「実父の体調が悪くなっており、あまり時間がない」「節税対策として、即効性があるのは中古物件購入。新築だと、建設中に相続が発生すると効果が得られない場合がある」。訴訟資料には、相続人や銀行担当者の生々しいやりとりが記されていた。

この訴訟は、相続税を巡る国税当局の課税処分の取り消しを求めたものだった。一、二審判決によると、横浜市内の賃貸マンション1棟を相続した相続人らは、通達に基づいて土地は路線価、建物価格は固定資産税評価額で計約4億7千万円と算定し、相続税を申告した。このマンションは、相続人の父親が亡くなる2カ月前に売買契約を結んだもので、父親は千葉銀行から約15億円を借り入れていた。

相続税はプラスの資産から借入金などを差し引いて申告する。この賃貸マンションの購入や借り入れにより、約3億円超の相続税の圧縮効果があった。

国税当局はこのマンションの評価額を疑問視し、不動産鑑定評価を実施した。評価額は約10億円だった。一般的に通達評価だと、賃貸マンションの場合、物件の収益性はそれほど加味されないため大きな価格差が生じるケースもある。国税当局はこうした価格差などを踏まえ「伝家の宝刀」とも呼ばれる通達の例外規定を使って追徴課税。相続人側は争ったが4月に最高裁が相続人側の主張を退け、敗訴が確定した。

東京地裁、高裁は国税当局の処分を是認した判決の中で、「本件不動産の購入が相続税対策のためであったことは明らかだ」と言及した。こうした相続人側の意図を証明したのが、千葉銀行の行内資料(渉外履歴など)だった。さらに、その資料の収集には国税の執念ともいうべきものがあった。

国税当局は、千葉銀行に調査を実施した際、この資料を閲覧した。

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